心と真我


I認識には感覚が生じる前の段階もある

のっけから脳に関する質問だが、あなたは脳を働かせたい時どうなさいますか。
例えば脳に針を通すとか、脳に電気を通したりワサビをすり込んだりして刺激を与えるとか、そういう脳そのものに対して何かをなさるようなことは絶対にございませんよね。ご承知のように我々は、脳を働かせたかったら、ただものを考えることだけをすれば良いわけだから。
ちょうどそれと同じように我々は、内なる目撃者つまり真我を顕在化させたかったら、真我そのものに対して何かをする必要は全くないのであって、ただモノを有りのままに見ることだけをすれば良いのである。それと言うのも脳がものを考える器官であるように、真我とはモノを有りのままに見る意識のことだからである。
真我とはモノを有りのままに見る意識のことなので我々は、モノを有りのままに見るという行為を通してそれを顕在化できる、という次第だ。簡単な理屈でしょ。
細かいことを申せば、モノを有りのままに見るという方法以外にも真我を顕在化させるための方法はあることはあるが、数ある方法の中でも一番分かりやすいのはやっぱり、実践の中に見ることが含まれているこの方法だろう。とはいえ当然のことながら、この方法にも実践上の難しさというものはある。
この方法の実践上の難しさはひとえに、モノを有りのままに見るためには一切の想念を脇に置かねばならない、という条件から来ている。つまり、一切の想念を脇に置くことの難しさがそのまま、モノを有りのままに見ることの難しさになっている。
既述のようにこの条件は、見るモノが静止している場合よりも動いている場合の方がクリアしやすいが、この条件がクリアされることによって真我が顕在化した時我々に分かることの一つは、真我にはモノと一体化する側面もある、ということだ。
この事実が示してもいるように、真我の何たるかをより詳細に言い直すならば、モノと一体化してモノを有りのままに見る意識ってことになる。そしてこれも繰り返しになるが、この真我におけるモノと一体化する側面に着目する限りでは、真我は鏡になぞらえることもできる。
真我がモノと一体化している様は正に、鏡がモノを映している様さながらである。
ところで、もう気づいておられるだろうか。
真我を鏡になぞらえることによって象徴的に表現できるのは、今申し上げた真我におけるモノと一体化する側面だけではない、ということに。便利なことに、真我を鏡になぞらえることによって、もう一つの別の事柄をも併せて表現できるのである。
気づいておられない方のために、それを探るヒントを一つ挙げるとすれば、鏡にはモノは映るがモノに対して我々が抱く感覚までは映らない、ということである。大事なことなので一応確認させていただくが、これに関して異存のある方はまさかおられませんよね。我々は眼の前にあるモノ、例えば花とか置物などに対して抱くのと全く同じ感覚を鏡に映る花とか置物などに対しても抱きはするが、だからといって、我々の抱くその感覚までが花や置物などと一緒に鏡に映っているわけじゃないことは、誰にとっても自明のはずだから。
これでもうピンと来られた向きもあろうかと思うので、明かさせていただくが、真我を鏡になぞらえることによって象徴的に表現できる「もう一つの別の事柄」とは次のようなものである。
「真我とモノが一体化している時、感覚をはじめとする全ての想念は排除されている」
さて以上の点を踏まえた上であらためて、世界やモノを真我という名の鏡に映る鏡像として眺めてみられたい。それによって直ちに全ての想念が脇に置かれるということはないとしても少なくとも、我々の認識の中には感覚などの想念が生じる前の段階における認識ってのもある、ということが受け入れやすくなるに違いない。もしくは、そういう認識の状態に入りやすくなることもあるだろう。ここに言う「そういう認識の状態」なるものが、モノを有りのままに見ている状態の別の表現であることは、もう分かっておられますよね。
ちなみに世間一般における認識という言葉の使われ方を見てみると、感覚とかイメージとか思考などの想念によるモノの把握のみを指していることもある。というよりもむしろ、その方が多いかも知れない。仮にその伝に従うならば、真我は認識が開始される前の原初の意識として位置づけることも可能だ。が、ここでは認識という言葉の意味をもっと広く取り、敢えて前述のような言い方をさせていただいた。
真我という名の鏡にモノが映っている状態を、認識が開始される前の状態と取るかそれとも、認識の開始点と取るかは意見の分かれるところだろう。が、どちらの見方をするにせよ、真我という名の鏡にモノが映っている時、イメージや思考はもとより感覚のような微細な想念さえも排除されているものなんだ、という一番肝心なことさえ分かっていれば、それでよいのだ。
Jに続く
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