心と真我


A瞑想中の体験を目撃しているのも真我である

瞑想という言葉は一般的には、(眼を閉じて)心の奥深い層に入って行く行為を指すことが多い。見たところ、その種の瞑想にいそしんでおられる方のほとんどは悟りというものを、心の奥深い層で起こる出来事であるかのように思っておられるようだ。それは例えば、自分を超えた大いなる存在と出会ったり、繋がったり、一体化することだったりする。
結論としては、心の奥深い層で起こるとされているこれらの出来事は本当は悟りではない、ということを申し上げたいのだが、理解の一助としていただくためにまず、考えていただきたいのは次のことである。
仮にあなたが瞑想中に、大いなる存在と出会ったり、繋がったり、一体化したりした場合、当然のことながらあなたは、そういう出来事が起こったことを知るわけだが、知ることができる理由はひとえにあなたの中に、それらを目撃する者が居るからに他ならない。
もしもあなたの中に、それらを目撃する者が居なかったらあなたは、それらが起こったことを知り得ないはずである。
根本的な話になるがそもそも、前述の出来事に限らず、もっと広げて言うと瞑想中の出来事に限らず、出来事と名の付くものは全て、あなたが知ったことによって存在したのだ、とも言える。つまり、あなたに起こった出来事の全ては、あなたが知ったからこそ存在したのであり、あなたが知らなかったら存在しなかったのである。そして繰り返しになるが、あなたがそれらを知ることができたということは取りも直さず、あなたの中にそれらを目撃する者がいた、ということである。
さてそれではここで、以上の点を踏まえながら、目撃する者は目撃される者よりも大きい、という事実に思いを馳せていただきたい。もちろんこれには、「意識の世界においては」という但し書きが付くのだけれども。
意識の世界においては目撃される者より目撃する者の方が大きい、と言えるのは、前者は常に後者の中に在るからだ。
従って心の奥深い層において、あなたがどれだけ大きな存在に出会ったとしても、そいつは目撃者ほどには大きくない、ということになる。言い換えるならば、そいつはどんなに頑張っても、全存在の中で最も大きいものにはなれない即ち、究極的な存在にはなれないってことである。
我々から見て、究極的な存在もしくは究極の一者と呼ぶに値するのは、有形無形のあらゆるものをその視野に収めることのできる、我々の内なる目撃者を措いて他にはない。大きさにおいて、それに勝るものは無いのだから。そして本当は、悟りとはそれを発見することなのである。

Aのオマケ

余談だが、悟った禅僧とか覚者と呼ばれる人たち(クリシュナムルティーとかオショーとか)が提示している悟るための方法というものは、悟りに対する前述のような誤解をお持ちの方々には真意が伝わりにくいようだ。前者と後者とでは、悟りに対する理解が丸きり違うので、当然と言えば当然のことではあるのだが。
悟りの何たるかを正しく理解している人の言葉が、悟りに対する前述のような誤解を持っている人に正しく受け止められたとしたら、そっちの方がかえって変だ、とも言える。見ているものが、お互いに全く違うのだから。
あくまでも比喩に過ぎないが、例えばの話、悟りとは「青」だと思っている人の言葉が、悟りとは「赤」だと思っている人に正しく伝わるわけがない。
後者がよくやるいけないことの筆頭は、前者の言葉(悟りについての発言)の意味を、自分にとって理解可能なものにすり替えてしまう、ということである。
一つの具体例を挙げるならば、例えば、悟りに到るための手立てとして前者によって提示されているものの一つに「モノを有りのままに見る」というのがあるが、これに対して本来の意味からずれた解釈を後から付け加えたのは後者である。
本来の意味からずれた解釈というのは簡単に言うと、「モノを有りのままに見る」イコール「モノを感じながら見る」、というものである。
モノを感じる働きは心の奥深い層において起こるものなので、そういう風に解釈すると彼らにはピッタリ来るのかも知れないが、間違いは間違いだ。
なぜ間違っているのかと言うと、「モノを有りのままに見る」の真意はモノを感じる働きが発生する直前の今、つまり十分の一秒後でもない、百分の一秒後でもない、千分の一秒後でもない、その直前の本当の今、ギリギリの今においてモノを見る、ということであるからだ。ただし、このことを十分に理解するには、モノを感じる働きが発生した時には既にモノが眼に映った時からいくらかの時間が経過している、ということが把握できていなければならないのだけれども。
これについての詳細は今後の話の中で披露いたしますので、ピンと来てない方はその時までお待ちいただきますように。
話が横道にそれてしまったがこのように、覚者の言葉というものは覚者ならぬ人々に真意を曲げて受け取られる宿命を持っているものだ。
Bに続く
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